今回は憲法の「統治行為論の判例と学説」について確認していきます
◆【砂川事件判決】
この事件は日米安保条約及び、アメリカ駐留軍の合憲性が争われたものです
事件の詳細な概要は割愛し、ポイントを挙げていきます
・”高度に政治的な条約”であっても、「一見極めて明白に違憲無効」であるならば、例外的に司法審査権が及ぶが、安保条約は「一見極めて明白に違憲無効」とは断定できないという判断
・曖昧さがあるが、少なくとも「統治行為論」的な発想の影響はうかがわれる
もう一つ統治行為論の有名な判例をみてみます
【苫米地事件】
この事件は衆議院の解散により失職したが、任期満期までの歳費の支給を訴えたものです
解散は「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為」であり、裁判所の審査権の対象にならないとしました
この「高度に政治性」とは、解散後の総選挙により、政権交代に繋がるものであるとされます
この判例のポイントは…
・統治行為論の論拠については「内在的制約説」に立つ
・砂川事件判決では、高度に政治的な決定でも、「一見極めて明白に違憲無効」かどうかの審査はできるとしていたが、本判決にはそのような例外を認めている部分がないこと
(=理由の説明がなし)
では、学説について見てみます
◆学説の動向
→自制説、内在的制約説を併せ取り入れつつ、司法審査権の限界を総合的に判断しようとする説が有力
・「統治行為」の範囲は狭く限定すべき
・重大な人権侵害の疑いが問題となっている事件では、高度に政治的な決定についても司法審査を行い人権を救済すべき
=「機能説」
つまり、個々のケース×ケースで裁判所の果たすべき行為としています
以上、違憲審査権の帰結について、統治行為論の判例と学説の傾向をみてきましたが、昨今の行政書士試験では判例の結果はもちろん、そこに至る考え方が問われるなど毎年難化傾向にあります
憲法を勉強する際には、判例の結論だけでなくどのような判断からそれが導かれたのかまで学習していきたいです✏️