前回は国家賠償法1条の6つの条件を確認しました。今回はその中身を一つずつ見ていきたいと思います
①公権力の行使であること
→権力的な行政作用だけでなく、非権力的な行政作用も含まれる
ここの「非権力的な行政作用」とは、例えば行政指導を例にとると、本当ならその行政指導をするべきではなかった場合などです
②公務員であること
→ここは、文字通り「公務員」であることとなります
③職務上の行為であること
→どこまでが職務上の行為なのかという点については、「客観的に見て職務中と考えられる」ことになりますが、例えば、警察官が非番にパトカーを運転するなどは一般人から見ると職務中に見えるなど判断が難しいケースもありえます
・最高裁の判断基準
=職務執行中ではなくても、客観的に見て職務執行をしているように見える場合(職務執行の外観、外見を備えている場合)は、たとえ仕事中でなくても職務執行とみなすとしています
【最判昭和31年11月30日偽警官事件】
この事件は、昭和23年に警視庁の巡査が生活に困っており、職務質問をしてお金を巻き上げようとし、同僚の巡査から拳銃を盗み、非番の日に制服、制帽、盗んだ拳銃を装備し、川崎市の駅で一般人へ職務質問をし、駅長室へと連行しました
そして、所持品を調べるとし、あらかじめ自分で用意していた300円入りの封筒を紛れ込ませ、スリの濡れ衣を着せて派出所へ連行するとし、相手の所持品を取り上げました
その連行の途中で、トイレへ入り巡査は逃げようとしたが見つかり、「ドロボー」と叫ばれそれに驚き、盗んだ拳銃で相手を射殺してしまったものです
そこで、相手の奥さんが国家賠償訴訟に基づいて訴えました
ここで問題となったのは、射殺したのは職務上の行為なのかどうかです
この日は非番ではあったが、制服、制帽、拳銃を持っており、最高裁はたとえ実際には職務執行中でなくても、客観的に職務執行の外観を備えているとし、職務執行中となりうるとしました