今回は憲法の「違憲審査制の帰結」について確認します
日本には、憲法訴訟という独自の訴訟形式はなく、具体的な刑事、民事、行政事件訴訟という個々の具体的な事件に対して、当事者の憲法解釈が行われています
では、憲法で問題となる規定がある場合にそれが違憲か合憲かによって判決の主文が左右されるのか考えてみたいと思います
主文とは、刑事事件であれば
→「被告人は無罪」
民事事件であれば
→「被告は原告に対して金○○万円支払え」
行政事件であれば
→「被告の原告に対する○○の件につき、いついつの処分を取消す」
といったものになります
日本の違憲審査制は以前の投稿でも確認した通り、付随的審査である性質上、裁判所はあえて主文にて「憲法の内容はこうだ」としてしまうと、その影響は大きくまた違憲審査立法権は重要な権限でもあるのでできるだけ慎重に行使すべきとしています
(=憲法判断回避の準則)
そのため、裁判所の憲法判断は判決の「主文」には掲げられない点を覚えておきたいです
では有名な【恵庭事件判決】を見てみます
(概要については割愛します🙇♂️)
本判決のポイントは
・本判決に対して検察側は控訴を見送り、1審で無罪が確定した
・最高裁は、憲法判断の回避に関する一般的ルールを明示的に定式化していない
・最高裁は、基本的には具体的ケースにおける裁判の結論を左右しないような憲法判断を避ける傾向にある
・裁判の結論とは直結しない「傍論」の中で憲法判断を述べることがある
第1審の札幌地裁では、裁判所が憲法判断できるのは裁判の結論を決めるのに絶対必要なときだけに限るとしたが、最高裁はより柔軟に、裁判の結論を左右しないなら憲法判断をしなくてもよいという立場であるというのがみえてきます
結局この恵庭事件判決は検察は上訴せず、被告人も無罪となり、訴えの利益がないため上訴もできず無罪が確定し、自衛隊の合憲性については判断がされませんでした
次回は学説の傾向と問題の所在についてみていきたいと思います