今回は会社法の「議事と決議」について確認していきます
◆議事
→定款または、慣習によるもので、議事の運営は議長が行い、議事録の作成が義務付けられています【会社318条】
◆議長
→通常は定款で決められ、その定めがないときは総会で選出されます
【会社315条】では、議長の権限について定められています
この議長の権限について、一つ判例を見てみます
【最判平成8年11月12日】
この判例は、四国の電力会社の総会のもので、原子力発電所に対する反対派のグループがおり、その年の総会は荒れることが予想されていました
この反対派の人達は総会の一番前に座ろうと、前日から会場の近くに宿をとり、朝一番で並びましたが、会場に入るとすでに6列くらいまでの列が、従業員によって埋められていました
ここでは、反対派の人が精神的苦痛(民709条の違法行為)を請求しましたが、ここでは、着席位置について株主には法的権利があるのかどうかが争点となりました
最高裁は、このケースでは反対派の人も議長により指されて発言していたこともあり、法的な権利は侵害されていないとし、また議長には着席指定権も含まれているため問題はないとしました
この年の総会は事前に荒れることが予想されていたので、総会の秩序を維持するために、反対派の人を遠ざけたいという意図もあったとしました
仮には従業員が騒いで強行採決をしたような場合は、「議決方法が著しく不公正なとき」にあたり取消が可能としています
株主の着席位置については、例えば会場が従業員に埋め尽くされて反対派の人が座れないなどのことがあれば、その法的権利は認められる余地があるといえます