今回は憲法の「違憲審査制」について確認します
近年の憲法の出題の傾向は、難易度が高い思考型の問題が見られるので、理解度を高めるためにもその考えの元になる違憲審査制の性格を見ていきたいと思います
まず、基本類型を見てみると
・司法裁判型
・憲法裁判型
の二つのモデルに分けられます
<司法裁判型>
→司法権を持つ裁判所の全てが審査権の主体をとる(下級裁判所にも審査権を付与)
◆審査の方式=付随的審査
→個々の具体的な訴訟事件に付随的して行われる
そのため、ある問題について具体的な個人的利害関係のない者は、その件については裁判所の違憲審査を求める権利はないとされる
具体例)
業務停止命令などの行政決定について、「この決定の根拠となる法律の規定は憲法違反」と主張し、その決定の取消や、やり直しを求める行政訴訟
◆違憲判決の効力
→問題の規定そのものが正式に廃止されるわけではなく、個々のケースごとの法律の適用除外となる
<憲法裁判型>
→特別に設置された憲法裁判所のみに審査権を集中、独占させる
◆審査の方式=抽象的審査
→個々の具体的な紛争、事件とは無関係に行われ、立法の合憲、違憲自体を直接に審査の対象とする
例)ドイツの連邦憲法裁判所
◆違憲判決の効力
→その法律の規定自体が廃止され、一般的に無効となる
違憲審査制の二つのモデルを確認しましたが、日本はどうなのかを見てみます
わが国の違憲審査制の性格は、[憲81条]を根拠とするとしていますが、下級裁の審査権の有無や、審査の方式などはっきりとしない点もありました
憲法制定の過程では、政府は「81条は抽象的審査を定める趣旨ではない」と説明していました
重大判例の[警察予備隊違憲訴訟]を見てみます
警察予備隊とは自衛隊の前身の前身と言えるもので、警察力を補うためのものです
これに対して日本社会党の鈴木氏が予備隊は軍事力に近いもので憲法9条にあたると直接最高裁判所へ訴えました
争点は、予備隊の設置で原告個人が直接に明確な具体的実害を受けたものではないこと
そのため、具体的な紛争には当たらず、司法裁判型の下では原告に違憲審査を求める権利はないとし訴えを却下、いわゆる門前払いとなりました
この判例のポイントは
・認められている審査の方式が抽象的審査ではなく付随的審査であること
・下級裁にも違憲審査があること
わが国の違憲審査制は司法裁判型の「付随的審査制」であり、個々の具体的な訴訟事件に付随して行われる審査であり、そのケースの裁判の結論を決める前提として、必要に応じて付随的審査をし、その事件に適用されるべき立法の合憲、違憲を審査しているとされます
関連の判例として[恵庭事件判決][砂川事件]についても要チェックです❗️
判例の結論を覚えることも必要ですが、「なぜ◯◯でないと◯◯でないのか」の理由もしっかりとおさえておきたいです