今回は前回に続き、行政法の「行政計画」について確認していきます
前回は行政計画の処分性についてみていきましたが、今回はその行政計画に対する信頼についてみていきます
◆行政計画に対する信頼の保護
いったんできた行政計画から、途中でその計画を変えて計画を作ってもよいのか…
結論からいうと、「よい」となります
行政計画は計画にすぎないため、行政庁が必要に応じて途中で変えても、または廃止しても問題はなく、違法ではありません
しかし、最初に作った行政計画を信じて、先行投資などをした国民に対して行政庁はどうするのかという問題がでてきます
いくら計画にすぎないといっても、国民からすると行政庁が作ったものだから信じたとなりますよね😅
では、判例を確認します
【最判昭和56年1月27日土地の誘致政策事件】
この事件は、ある村で製紙工場を作ろうと企業を誘致しようとし、その企業の社長も乗り気で、村の議会でもその方向性を確認していました
そこで、企業の社長は色々な機械を発注したり準備をはじめたり、建設予定の土地の明渡しのための補償金を払ったりしていました
ところが、その後の村長選挙で別の新しい村長が選出され、その新しい村長は工事反対の代表で全面的に反対し、事実上この村で製紙工場をつくることができなくなったものです
そこで、企業の社長は市町村の政策で180度変わってしまうのは困ると、損害賠償を求めました
最高裁は、そもそも行政主体の計画を変えるのは何ら問題はなく、当然にありえることだとした上で、しかし、行政庁の計画を信頼して行動を行なっている人がいる場合は、その信頼を保護する必要があるともしました
ただ、その信頼は100%保護するというものではなく、社会通念上、目をつぶることができないほどの損害が発生している場合としています
つまり、ちょっとくらいなら我慢してもらうということです
この事件では、補償しなければならないとしています
この判例は、金額の問題でなく、最高裁が一定の基準を示したことが重要となっています