今回も憲法の「予算の修正」についてみていきます
前回は内閣の予算原案に対して、国会は「減額修正権」については可能で制限もない(通説)ことを確認しました
今回はその逆の予算原案に対して増額修正権はどうであるのかをみていきます
◆増額修正権の可能性と限界
<多数説・政府見解>
=可能だが、制限はありとしています
その理由は…
・【憲83条】の財政民主主義の観点から、国会の修正権を全否定することはできないこと
・その反面で、内閣の予算作成や提案権も重視する
つまり、原案との同一性を失わせる大修正は、内閣の提案権を損なうため不可とする考えです
<有力説>=可能で、制限もなし
・憲法には、国会の修正権を制限する規定が存在していないこと
・国会の審議、議決権を重視する
・国会は原案を否定することによって、内閣な新たな原案の作成、再提出を迫ることも可能なこと
・内閣の「提案権を損なう」ことにはなるかどうか、原案との「同一性を失わせる」ことになるのかどうかの基準が曖昧なこと
有力説は、これらを理由に「制限なし」としています
かつては「そもそも増額修正は不可」という内閣の提案権を強調する見解もありましたが、現在はこの両者の説となっています
この両者はお互いに増額修正は可能としていますが、その制限について見解が分かれます
国会は内閣の予算原案を否決することで、新たな原案作成、再提出を求めることもできるため、それは国会自身による大幅修正と実質的に大差はないというのが有力説の考えになります