今回は民法の「法定地上権」について確認します
◆法定地上権[民388条]
土地または建物が同一の所有者に属している場合、その一方または双方に抵当権が設定され、競売によって土地の建物の所有者が異なるようになったときに、土地の上に建物が存在する根拠が無くなってしまうことを防ぐために、その建物のために地上権が設定されたものとみなすもの
<法定地上権の要件(4つ)>
①抵当権設定時に土地の上に建物が存在していること
②抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に帰属していること
③土地と建物の一方または双方に抵当権が存在すること
④競売が行われて土地と建物が、別々の者に属することになったこと
抵当権の問題で、その成立を聞いてくるパターンであれば、この4つの要件にあてはまらなければ法定地上権は成立しないことになります
判例で、法定地上権が「成立する」とされたものをみていきます
・土地と建物の両方を所有する者が、土地に抵当権を設定後に、建物を第三者に売り渡した場合
・法定地上権成立要件を満たしている場合で、建物が取り壊されて、「再築」された場合
→原則法定地上権は成立しないが、例外的に新しい建物の所有者が土地の所有者と同一であり、土地の抵当権者が再築された建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定登記を受けた場合には、新建物のために法定地上権が成立する
逆に法定地上権が成立しないパターンも見てみます
・土地への1番抵当権設定後に建物が建築され、その後に2番抵当権が設定
→2番抵当権者がその抵当権を実行した場合
・土地に抵当権設定当時に土地が共有
→一方の共有者が建物を所有で、抵当権を実行
この「土地共有」のパターンは一見成立するように見えますが、成立してしまうと他の共有者に損害を与えてしまうことになります
その逆で、「建物の共有」パターンでは…
・土地に抵当権設定当時に建物が共有で、一方の共有者が土地を所有
→後に抵当権が実行
=法定地上権は成立
「建物共有」の場合は、建物の持分権者には利益となるためです
共有は、土地のみが共有、建物のみが共有である場合や、土地のみに抵当権、建物のみに抵当権が設定された場合、また土地建物の両方が共有であるなど様々なパターンがあります
法定地上権の問題は様々なパターンがあり難しく感じますが、一つずつ図に書きながら、まずは4つの要件全てに当てはまるのかを確認するだけでほとんどの問題に対応できるようになるので、成立要件の4つは必ず覚えるようにしましょう💪