今回は行政法の「行政庁の裁量行為の範囲が逸脱しているとされた判例」についてみてみたいと思います
◆動機目的が不正な場合の事例
[個室浴場事件]
最判昭和53年5月26日
ある業者が個室付浴場を作って営業をしようと土地を購入。その後法律の定めに則って建築計画を立てるが、地元住民が大反対し、県も途中から反対にまわる
県は特定施設(学校や児童福祉施設など)の周囲200mは個室付浴場の建設は出来ないとしていたので、そこの近くの公園を児童福祉施設にすると決めた。そして営業を始めていた個室付浴場に対して、県は施設があることを理由に営業停止処分としたものです
最高裁=児童福祉施設の認可の処分について、適法な手段だが、この業者への妨害は明らかであり違法とした
◆手続に不備がある事例
[個人タクシー事業免許事件]
最判昭和46年10月28日
審査人が個人タクシーの営業の免許を申請したが、この審査は細かい基準があり、内部規定があってそれによって審査されており、結果、却下なった
そこで、どうして却下なのか、内部規定があるならそれを公開すべきでまた、主張できるようにすべきと訴えたものです
最高裁=内部基準をおくことは認めたが、その内部基準に基づくときは、審査人に対して主張の機会を与えるべきとし、手続上の不備があるとして処分は違法とした
行政庁に自由裁量権が認められる場合においても、そこには一定の限界があって、その範囲を超えまたは、裁量権の濫用があるときは違法行為となるため、自由裁量であっても司法的統制からは解放されているわけではありません
→それが[行訴法30条]裁量権の取消
に定められています
自由裁量行為について、その適法性の審査に当たっては、裁量権行使の公正を担保するという見地から、処分に先立つ適正な裁量基準をつくることや、処分手続の公正な運営を重視すべきです
そして、行政手続法ではこの判断をさらに進め、申請による処分の場合には処分の
→「審査基準」を
不利益処分の場合には
→「処分基準」を
事前にできる限り具体的なものに定め、これを公表すべきこととしています
[行手5条][行手12条]
(※12条は努力目標)
これらの規定は、覊束裁量や自由裁量を立法的に、その幅を狭めたものであるとされます
今回判例の中身をかなり噛み砕いて見てみましたが、行政法は民法と違い具体的なイメージを持ちずらいので、判例から行政法の体系を理解していくと分かりやすくなると思います✍️